青山詰めの創作風景(後編)(部員雑感シリーズ)
前編の続きです。
STEP2:1手詰を作る
作りたい詰将棋をイメージできたら、いよいよ具体的な図面を考えていきます。詰将棋を作る方法はさまざまですが、その1つに、1~5手詰程度の短い詰将棋を収束として、そこから1手ずつ逆算して手数を伸ばしていく方法があります(逆算式)。今回は目指すべき詰め上がりの形が決まっていますから、この方法を使いましょう。詰め上がりが「山」の字となるような1手詰を作ります。
盤面をじっと眺めて考えているうちに、両王手の詰め上がりを思いつきました(図1)。余詰(=他に詰む手順)も特になさそうです。この時点では、3四と3五の駒が「山」という字を形作るためだけで詰み手順に関係しない駒(=飾り駒)ですが、これは今後手数を伸ばしていく過程で解消していくことにしましょう。
STEP3:逆算して手数を伸ばす
1手詰ができたら、逆算して手数を伸ばしていきます。この時、次の2つを意識しました。
①捨て駒など、できるだけ妙味ある手順を盛り込む。
②すべての駒の配置に意味を持たせる。
①はやはり詰将棋ですから、平凡な手順の連続では面白くありません。捨て駒(特に2枚以上駒が利いている地点に捨てる焦点捨て)が多く入ると、ぐっと詰将棋らしくなります。②も重要で、1つの駒の配置に複数の意味を持たせられるとなお良いです。今回のようにあぶり出しの創作の場合は、まず飾り駒に意味を持たせる方向で逆算していきます。
さて、図1から捨て駒で逆算するとなると、▲5五銀打(or金)、△同X、▲5三銀成という手順が思い浮かびます。退路封鎖の手筋です。Xに入る駒はいろいろと考えられますが、ここではひとまず桂にしてみましょう(図2)。
このままだとまだ3四と3五の駒が飾り駒なので、意味を持たせるようにさらに逆算します。玉を一路寄せて、5四に飛を捨てて呼び出す手順を考えました(図3)。3四に攻方の歩、3五に玉方の歩を配置することで、玉の逃げ道をふさぐ意味を持たせています。
飾り駒の存在を解消し、捨て駒が連続で入ったことで、だいぶ詰将棋らしくなってきました。2連続の捨て駒が入ったら、次に目指すは3連続の捨て駒です。さらにもう2手逆算すれば、発表図の完成です。
STEP4:検討・推敲をする
詰将棋が完成したと思ったら、その詰将棋に不備はないか、またもっと良い配置や手順はないかを確認します。余詰がないことの確認には、柿木将棋というソフトも使用しています。高い精度で余詰を検出・指摘してくれるので、創作には大変役に立ちます。
検討の結果、不備は見つからず、上の図で詰将棋として成立しているようです。あとはより良い配置や手順を求めることになりますが、「捨て駒中心で、解後感が良く難解でない『山』の字のあぶり出し」という当初の目標は達成できていると判断し、これで完成としました。
〈補足〉
発表図をさらに発展させるなら、参考図のような案もあります(▲4五金以下9手詰)。3枚の桂が跳ねだすというストーリーがあるので、こちらの方が手順としては上でしょう。ただし、今回は3部作を7手詰で統一したかったので、採用を見送りました(8手目△同桂と取らずに△5三玉と逃げる変化も正解となり、最終3手とはいえあぶり出しとしてはかなり気になるところで、修正の余地がありそうです)。
ここまで詰将棋創作の過程をご紹介してきましたが、いかがだったでしょうか。この記事を通して、将棋は指すだけではなく、詰将棋を解く、そして作るという楽しみ方もあるということを知って頂けたらとても嬉しいです。
(文責:河野)